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年功賃金の廃止 成果主義転換は合理的、不利益変更に当たらず

  年功給制度では、勤務期間が長いほど、賃金と能力・貢献のかい離が大きくなりがちです。一度、積み上がった本給等を引き下げるのは、容易ではありません。


 従業員の士気を高めるためには、「働いた者が報いられる」賃金制度への転換が求められます。
しかし、会社は長年にわたって、自らの判断で年功給制度を運用してきたのですから、一朝一夕に方針を変更するわけには行きません。高賃金を得ている従業員からみれば、「既得権」を脅かす措置です。十分な検討・準備期間を置き、新制度の趣旨を理解してもらう必要があります。

 

 それでも、一部の従業員が強硬に反対する事態も予想されます。この場合、「就業規則の不利益変更」の法理(労働契約法第10条)に基づいて、処理することになります。”塒益の程度、∧儿垢良要性、J儿稿睛討料蠹性、は使の交渉状況等を考慮し、合理性の有無を判断します。

 

 合理性があると認められれば、「個々の労働者が同意しないことを理由として、変更内容の適用を拒むことは許されない」(第四銀行事件、最判平9・2・28など)とされています。

 

 賃金制度の変更について、裁判所がどのような判断を下してきたのか、具体例をみてみましょう。ハクスイテック事件(大阪高判平13・8・30)で、従業員サイドは「能力・成果主義型賃金体系への変更は、不利益変更であり、変更前の規定が現に効力を有する」と主張しました。その際、「近時、年功型賃金体系の良さを見直す論理も有力」として、この趣旨に沿う論文等も提出しています。

 

 しかし、裁判所は「国際的な競争力が要求される時代には、労働生産性と直接結びつかない年功型賃金体系は合理性を失いつつある」「普通以下の仕事しかしない者についても、高額の賃金を保証することはむしろ合理性を害する」等の考え方を示し、制度改正の必要性を肯定しました。

 

 ノイズ研究所事件(東京高判平18・6・22)でも、「新賃金制度は資金原資額を減少させるものではなく、配分の仕方をより合理的なものに改めようとするものであり、どの従業員にも自己研鐘による職務遂行能力の向上により、昇格・昇給できるという平等な機会を保証している」と述べ、「不利益変更」という主張を退けました。

 

 ちなみに、ノイズ研究所事件の1審(地裁)では、変更の合理性を認めつつも、「代償措置が2年と短く、減少額も急激」という理由で、従業員側に軍配を上げています。高裁でその判断は覆ったわけですが、「十分な代償措置の有無」は、裁判の勝敗を左右する重要ファクターといえます。

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