労働関係・社会保険関係の法令や人事・労務管理問題に関する
タイムリーな話題を取り上げていきます。
進む手続きのワンストップ化 生産性向上へ政府が側面支援
 政府は、事業者の生産性向上を後押しするため、行政手続きコスト(手続きに要する事業者の作業時間)の削減を推し進めています。厚生労働省でも、令和元年6月に基本計画の再改定を行いました。
 課題の一つとして、「ワンストップ化の実現」が挙げられています。
 現在、たとえば従業員を採用すると、労働・社会保険の加入手続きを取りますが、制度によって様式・届先が異なります。
 作業時間の短縮のために、「届出契機が同一のものについては、ワンストップでの届出が可能となるよう」仕組みを整備するというものです。法律の改正作業が進行中で、令和2年1月にも改正施行規則が施行される方向です。
 この手の改善は掛け声倒れに終わりがちですが、今回、政府はかなり本気で取り組んでいる感じです。
 それはともかく、厚労省の「ワンストップ化問題」には相応の背景があります。平成13年に、中央省庁再編により、厚生省と労働省が統合され、厚生労働省が誕生しました。
 それまで、社会保険(健康保険と厚生年金)は厚生省、労働保険(労災保険と雇用保険)は労働省が管轄していました。当然、双方の仕組みには異なる点が多々あり、役所の窓口も異なっていました。
 役所の統合に伴い、将来的な労働・社会保険の一本化が課題として浮上します。
 たとえば、平成21年には、労働保険の年度更新と社会保険の定時決定について、期限を統一するといった改正も実施されています。
 しかし、まだまだ「先は長い」という印象は否めません。そうした中、今回のワンストップ化は「着実な一歩」です。政府が掲げる各種の改革には、企業に対して負担を課すものもありますが、こうした手続き面の改善は大歓迎といえるでしょう。
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異能な人材の社外流出を防ぐ 副業に対する社内方針確立へ
 内閣府総理大臣の諮問機関である規制改革推進会議が、第5次答申(「〜平成から令和へ〜多様化が切り開く未来」)を公表しました。
 雇用関連の項目をみると、「ジョブ型正社員(勤務地限定正社員、職務限定正社員等)の雇用ルールの明確化」「介護離職ゼロに向けた対策の強化」などと並んで、「副業・兼業の促進」「テレワークの促進」といった項目が挙げられています。
 確かにダブルワーク(複数事業場就労)は重要な問題ですが、最近、その取り上げ方はやや過剰な印象もあります。答申の中から、その背景を探ってみましょう。
 規制改革が必要な理由として、第一に「第4次産業革命が、金融・通信・教育・医療・農業などに革新的なイノベーションをもたらしていること」が挙げられています。第4次産業革命とは、「モノのインターネット(Internet of things)」や「AI(人工知能)」による技術革新を指すといわれています。
 働き方への影響については、「好きな時に好きな時間働く」スタイルが広がると予想されています。
 インターネット経由で、サービスの利用者と提供者を素早くマッチングさせる仕組み(シェアリング・エコノミー)が発達するなかで、起業チャンスも広がっています。
 大手企業では、副業・兼業をサポートする動きが顕在化していますが、「自由な働き方」を容認する一方で、副業を「自社のコントロール下に置く」という意図も見え隠れします。
 事業に将来性があれば、社外に流出(独立)させるのではなく、自社の業務にフィードバックさせる方向で検討します。
 現代は、空想家のアイデアが一夜で「大化け」する時代です。自社内の「異能人材」の掘り起こしという意味も込め、副業に対してどのような姿勢で臨むのか、経営者として思いを巡らしてみるのも悪いことではないでしょう。
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扶養は「国内居住」が要件に 日本人の家庭モデルにも影響
 現在、開催されている通常国会ですが、労働実務に関連する法律改正案(3本)は順調に審議が進んでいるようです。そのなかで「健康保険法等の一部を改正する法律案」がトップを切って成立し、既に公布されています。
 健保法改正案は、「被保険者資格の情報を一元的に管理する仕組みの創設」等を目的とします。あまり実務と関係ないようですが、「被扶養者等の要件の見直し」という項目が入っている点がミソです。
 改正法では、被扶養者を「日本国内に住所を有するもの(略)その他日本国内に生活の基礎があると認められるもの」と定義しています。これは、今年の4月から施行されている改正入管法(特定技能資格を創設)を意識した措置である点は明らかです。
 改正案の成立に合わせ、国会では附帯決議が出されています。前記の「国内居住要件」に関しては、「国籍による差別とならないように」とクギを指しています。それと並んで注目されるのが、「年収がほぼ同じ夫婦の子について、いずれの被扶養者とするか、被扶養認定の具体的かつ明確な基準を設定すること」という一文が付されていることです。
 現在は、「子等の人数にかかわらず、年間収入の多い方の被扶養者とすること」が原則とされています(昭60・6・13保険発66号)。
 基本的には、「片方の被保険者(大多数は男性)が配偶者・子供を扶養する」パターンを想定した規定という印象を受けます。特別な事情のある家庭に関しては、片方の被保険者を女性と読み替えて対応する形です。
 しかし、男性・正社員、女性・パートという図式が大きく崩れる中、「片方に一括する」という対応がそぐわなくなってきているのも事実です。これを契機に、扶養の在り方全体についてさらに議論が深められることを期待します。
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有給休暇管理簿
 平成31年4月以降、年休の付与日が到来した人から、年休管理簿を作成し、3年間保存する義務が課されています(労基則第24条の7)。必要データの出力が可能なら、分割することもできます。
 管理簿には、「年休を与えた時季」、「日数」、「基準日」を記載します。日数には、半日単位で取得した回数と時間単位で取得した時間数の両方を含みます(ただし、年休の年5日消化義務を考える際には、時間単位年休分はカウントされませんのでご注意ください。)。
 管理簿には、「法定の年休が与えられるすべての労働者」に関する情報を記載します。付与日数が10日未満の労働者(使用者による5日の時季指定の対象とならない労働者)についても、管理する必要があるので要注意です。
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国は外国人受入を積極推進へ 自社の基本スタンス見直しを
 改正入管法が施行され、「特定技能資格」の外国人雇用がスタートしました。
 年月が経ってから振り返ると、「2019年度は、労働政策の大きな転換点だった」と総括されるようになるかもしれません。
 仕組みの受け皿となる改正入管法案自体は、昨年の秋、国会審議ーカ月余という「突貫工事」で成立しました。しかし、その後は、着々と外国人の受入れ環境整備が進められています。
 現在の通常国会には、健保法改正法案が提出されています。主要な内容は「被保険者情報の一元管理」等ですが、「被扶養者要件の見直し」に関する項目も含まれています。今後、外国人の被保険者増が見込まれる中、被扶養者は原則として「日本に住所を有する者に限る」としています。
 労働施策総合推進法(従来の雇用対策法)では、国の重要施策の一つとして外国人の適正雇用を掲ず、それに基づき「外国人雇用管理指針」を策定しています。
 この指針も、今年の4月に抜本改正されました。働き方改革関連法など、最新の法改正情報を盛り込むと同時に、「母国語を使った分かりやすい説明」等の配慮に関する事項を追加しています。
 法整備だけではありません。特定技能資格者のうち、農業・漁業については、派遣形態も可能とされています。既に農業分野に外国人材を派遣する専門会社を設立し、サービス開始を目指している県もあるということです。
 多民族国家の紛争等をみていると、個人的には外国人の多数受入れに危機感を抱く方も少なくないでしょう。しかし、経営者の立場からは、外国人雇用を積極推進する「同業他社との競合」という問題を看過できません。外国人労働力とどう向き合うか、各企業は自社の戦略を長期的観点から練り直す必要があるでしょう。
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