労働関係・社会保険関係の法令や人事・労務管理問題に関する
タイムリーな話題を取り上げていきます。
パートの社保加入で議論開始 段階的に規模要件を引下げか
 パートに対する社会保険の適用拡大ですが、いよいよ法改正に向けた議論が始まります。
 企業規模501人以上の大企業については、既に平成28年10月から、加入要件が週の労働時間20時間以上その他に拡大されています。次のターゲットは、中小以下の企業です。
 遡ると、適用拡大の話は西暦2000年代に入った頃に始まりました。その後、「ねじれ国会」など政治の問題もあり、紆余曲折を重ねましたが、「年金機能強化法」の成立により、大企業での実施が決まりました。
 当然ながら、「その後、中小・零細企業をどうするか」という問題が生じます。改正法の附則では、「平成31年(令和元年)9月30日までに検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講じる」と定められていました。
 そういう意味では、拡大はいわば既定路線です。法改正論議が本格化する直前の9月、厚労省設置の検討会(働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会)が報告を発表します(本稿執筆時点では、議論の整理の段階)。
 検討会の名称からも分かるとおり論点は「企業規模要件の引き下げ」「加入条件のさらなる緩和」「第3号被保険者の取扱い」「複数就労者への適用」など多岐にわたります。
 しかし、焦点が「規模要件」にあるのは明白です。財政面だけみても、厚生年金の保険料率は年々引き上げられてきましたが、平成29年で頭打ちです。収入増には、被保険者の拡大が欠かせません。
 一方、中小・零細企業では、社会保険料の負担増は企業経営に直接的な影響を及ぼすので、その緩和策が求められます。
 段階的な引下げが穏当なところでしょうが、どのようなスケジュール案が提出されるか、今後の議論から目を離せません。
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最賃引上げ目安は27円 今年度も過去最高を更新
 令和元年度の地方最低賃金ですが、全国平均で900円台に乗せました。経過をたどると、中央最低賃金審議会は、7月末に最低賃金改定の目安に関する答申を行いました。引上げ幅は全国平均で27円(昨年度26円)で、「昭和53年度に目安制度が始まって以来」の最高額を更新しました。率では、3.09%(同3.06%)相当となります。
 その後、都道府県労働局の地方最低地方審議会が答申を取りまとめましたが、改定額の全国加重平均額は901円となりました。目安を超える引上げ幅だった県は19に上ります。
 新聞等では、「東京・神奈川で初めて1000円を超えた」などと報じていました。最低賃金の目安は全国を4ランク(AからD)に分けて示されます。
 東京はもちろん最高のAランクで、目安どおりの28円が平成30年度の985円に上乗せされたので1013円となりました。
 経済が「力強さに欠ける」状況にある中、最賃の引上げピッチはかえって加速している感があります。中央最賃審議会の答申は、厚労大臣の諮問に答えるものです。7月初めに行われた大臣諮問では、「経済財政運営と改革の基本方針2019等に配慮した審議」を求めていました。
 同方針(いわゆる骨太方針2019、6月に閣議決定)では、「この3年、年率3%程度引き上げられてきたことを踏まえ、より早期に全国加重平均が1000円になることを目指す」とうたっていました。今後の「景気や物価動向」次第ですが、まだこの傾向は続きそうな見通しです。
 なお、今回の目安決定では、「地域間格差への配慮の観点から、最高額に最低額の比率を上昇させる」点にも重点を置いています。最賃の引上げ目安のDランクでは、前年の引上げ幅は23円でしたが、今年は26円にアップしていました。
 答申結果でも、最高の東京と最低県(15県)の格差が16年ぶりに1円縮小し、223円となりました。
 新しい地域最賃は、令和元年10月1日から10月上旬までに発効の予定です。
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進む手続きのワンストップ化 生産性向上へ政府が側面支援
 政府は、事業者の生産性向上を後押しするため、行政手続きコスト(手続きに要する事業者の作業時間)の削減を推し進めています。厚生労働省でも、令和元年6月に基本計画の再改定を行いました。
 課題の一つとして、「ワンストップ化の実現」が挙げられています。
 現在、たとえば従業員を採用すると、労働・社会保険の加入手続きを取りますが、制度によって様式・届先が異なります。
 作業時間の短縮のために、「届出契機が同一のものについては、ワンストップでの届出が可能となるよう」仕組みを整備するというものです。法律の改正作業が進行中で、令和2年1月にも改正施行規則が施行される方向です。
 この手の改善は掛け声倒れに終わりがちですが、今回、政府はかなり本気で取り組んでいる感じです。
 それはともかく、厚労省の「ワンストップ化問題」には相応の背景があります。平成13年に、中央省庁再編により、厚生省と労働省が統合され、厚生労働省が誕生しました。
 それまで、社会保険(健康保険と厚生年金)は厚生省、労働保険(労災保険と雇用保険)は労働省が管轄していました。当然、双方の仕組みには異なる点が多々あり、役所の窓口も異なっていました。
 役所の統合に伴い、将来的な労働・社会保険の一本化が課題として浮上します。
 たとえば、平成21年には、労働保険の年度更新と社会保険の定時決定について、期限を統一するといった改正も実施されています。
 しかし、まだまだ「先は長い」という印象は否めません。そうした中、今回のワンストップ化は「着実な一歩」です。政府が掲げる各種の改革には、企業に対して負担を課すものもありますが、こうした手続き面の改善は大歓迎といえるでしょう。
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異能な人材の社外流出を防ぐ 副業に対する社内方針確立へ
 内閣府総理大臣の諮問機関である規制改革推進会議が、第5次答申(「〜平成から令和へ〜多様化が切り開く未来」)を公表しました。
 雇用関連の項目をみると、「ジョブ型正社員(勤務地限定正社員、職務限定正社員等)の雇用ルールの明確化」「介護離職ゼロに向けた対策の強化」などと並んで、「副業・兼業の促進」「テレワークの促進」といった項目が挙げられています。
 確かにダブルワーク(複数事業場就労)は重要な問題ですが、最近、その取り上げ方はやや過剰な印象もあります。答申の中から、その背景を探ってみましょう。
 規制改革が必要な理由として、第一に「第4次産業革命が、金融・通信・教育・医療・農業などに革新的なイノベーションをもたらしていること」が挙げられています。第4次産業革命とは、「モノのインターネット(Internet of things)」や「AI(人工知能)」による技術革新を指すといわれています。
 働き方への影響については、「好きな時に好きな時間働く」スタイルが広がると予想されています。
 インターネット経由で、サービスの利用者と提供者を素早くマッチングさせる仕組み(シェアリング・エコノミー)が発達するなかで、起業チャンスも広がっています。
 大手企業では、副業・兼業をサポートする動きが顕在化していますが、「自由な働き方」を容認する一方で、副業を「自社のコントロール下に置く」という意図も見え隠れします。
 事業に将来性があれば、社外に流出(独立)させるのではなく、自社の業務にフィードバックさせる方向で検討します。
 現代は、空想家のアイデアが一夜で「大化け」する時代です。自社内の「異能人材」の掘り起こしという意味も込め、副業に対してどのような姿勢で臨むのか、経営者として思いを巡らしてみるのも悪いことではないでしょう。
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扶養は「国内居住」が要件に 日本人の家庭モデルにも影響
 現在、開催されている通常国会ですが、労働実務に関連する法律改正案(3本)は順調に審議が進んでいるようです。そのなかで「健康保険法等の一部を改正する法律案」がトップを切って成立し、既に公布されています。
 健保法改正案は、「被保険者資格の情報を一元的に管理する仕組みの創設」等を目的とします。あまり実務と関係ないようですが、「被扶養者等の要件の見直し」という項目が入っている点がミソです。
 改正法では、被扶養者を「日本国内に住所を有するもの(略)その他日本国内に生活の基礎があると認められるもの」と定義しています。これは、今年の4月から施行されている改正入管法(特定技能資格を創設)を意識した措置である点は明らかです。
 改正案の成立に合わせ、国会では附帯決議が出されています。前記の「国内居住要件」に関しては、「国籍による差別とならないように」とクギを指しています。それと並んで注目されるのが、「年収がほぼ同じ夫婦の子について、いずれの被扶養者とするか、被扶養認定の具体的かつ明確な基準を設定すること」という一文が付されていることです。
 現在は、「子等の人数にかかわらず、年間収入の多い方の被扶養者とすること」が原則とされています(昭60・6・13保険発66号)。
 基本的には、「片方の被保険者(大多数は男性)が配偶者・子供を扶養する」パターンを想定した規定という印象を受けます。特別な事情のある家庭に関しては、片方の被保険者を女性と読み替えて対応する形です。
 しかし、男性・正社員、女性・パートという図式が大きく崩れる中、「片方に一括する」という対応がそぐわなくなってきているのも事実です。これを契機に、扶養の在り方全体についてさらに議論が深められることを期待します。
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