労働関係・社会保険関係の法令や人事・労務管理問題に関する
タイムリーな話題を取り上げていきます。
いよいよパワハラも法制化へ 予防の前提は上司の意識改革
 厚生労働省の労働政策審議会では、パワーラスメント防止対策に関する審議を進めています。
 逆にいうと、今はパワハラが明文の法律で規制されていないということです。しかし、これはペナルティーを受けないという意味ではありません。裁判では、民法の使用者責任や債務不履行責任等の規定により、慰謝料等の支払いが命じられています。
 それでは何をやるかというと、セクハラやマタタラと同様に、指針を定めて、事業主に対してパワハラが発生しないように必要な措置を講じる義務(措置義務)を課そうというのです。
 新たに措置義務を定めるとどうなるかというと、これがまた分かりにくい内容となっています。たとえばセクハラについては均等法11条に規定がありますが、「作為・不作為の請求権や損害賠償請求権を与えるような私法上の効力を持つものではない」(菅野和夫「労働法」)と解説されています。
 しかし、均等法には紛争の解決援助の仕組みが設けられていて、セクハラ関係のトラブルも、都道府県労働局長の助言・指導、調停の対象になります。
 今回、議論されているパワハラ防止対策でも、指針の策定と併せて、調停制度、助言・指導に関する規定も整備するという案が示されています。
 セクハラの場合、会社の上層部がそれを支持するというのは、あり得ません。しかし、成績至上主義の企業風土の中では、パワハラに目をつぶる(容認する)経営者・上司がいないと言い切れるでしょうか。セクハラマタハラが法制化されたのは、ぴったり受け皿になる法律(均等法・育介法)があったからという側面もあります。パワハラをどう法律に組み込むかは今後検討される予定ですが、早めの対策が望まれるところです。
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働き方改革の第一歩が始まる 過重労働防止強化にも留意を

新しい1年を迎えましたが、2019年の課題は何といっても働き方改革関連法への対応です。4月1日から、改正労基法・安衛
法・労働時間等設定改善法が施行されます(時間外上限規制は中小を対象に1年の猶予など、経過措置あり)。

労基法は、時間外上限規制の強化、年休の強制付与、フレックスタイム制の拡大、高度プロフェッショナル制度の創設が柱となります。労基法の陰に隠れがちですが、安衛法の改正も実務的なインパクトは小さくありません。本欄では、安衛法の留意点を再確認します。

 

ポイントをかいつまんで述べれば次の3点です。

^綮嫐明椹愼垣度の再編
∀働時間把握義務の明確化
産業医等の機能強化

 

 

 

^綮嫐明椹愼垣度に関しては、現在(改正前)、時間外が月100
時間を超え、疲労の蓄積が認められる従業員が、自ら申し出た場合に実施義務が発生します。

今回改正では、時間外の基準を「80時間超」に引き下げたうえで、新商品開発業務従事者、高プロ制度の対象者には別の仕組みを新設しました。月100時間を超えれば、申出を介さず、面接指導を実施する必要があります。

面接指導制度再編の前提として、

∀働時間把握義務が安衛法の本則に明記され(66条の8の3)、
管理職等も含め「タイムカード等の客観的な方法」により始・終業時間等を記録し、3年間保存する義務が課されます。

時間外実績を把握した後は、
産業医と連携して過労死等を防止します。事業主は、時間外が80時間を超える労働者の氏名等の情報を産業医に提供すると同時に、労働者にも通知します。労働時間設定改善法で努力義務化された「勤務間インターバル」制度等も整備しつつ、従業員の健
康確保に努めましょう。

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指針廃止で就職戦線に異変? 「日本型採用戦略」の再構築を

経団連が、「採用選考に関する指針」の廃止を表明しました。同指針は、新卒学生の就職活動のスケジュール表を定めるものです。

 

これに対して、内閣官房も「関係省庁連絡会議」を発足させ、対応を検討するとしています。

 

振り返れば、平成25年には選考活動の開始を大学4年生の8月開始とする改正が実施されました(平成27年度から適用)。採用選考活動によって、学生が「本来の学業に専念できない」状況が生じているため、「短期決戦」型のスケジュールに組み替えたのです。

 

しかし、「あまりに日程がタイトだ」という批判の声もあり、平成26年には選考活動の開始を6月に前倒ししました(平成28年度から適用)。

 

今回は、さらに踏み込んで、指針の廃止に至ったわけです。振り子の針は学生生活配慮の方向にいったんは振れたのですが、大きく反対方向に揺れ戻し、振り切れてしまった形です。

 

新卒学生の採用戦線が激化し、「抜け駆け」に走る企業が増えるなか、経団連会長は「ルールがうまく機能していないという反省に基づく決定である」というコメントを公表しています。

 

しかし、現状追認ではなく、今後は「新卒一括採用と、募集基準を明確化した通年採用の併用が大事」と述べました。

 

いわゆる就職協定は、名前や性格を変えつつ、昭和28年(27年と記述するものもあります)から存続してきました。資本・商品市場と異なり、「労働力市場」はグローバル化の影響を受けにくい傾向があります。しかし、さすがに抜本的変革が必要な時期に来ているという指摘には一理あります。

 

政府の側も、通年採用の広がりを推進する方針を示しています。これからは、日本型労働慣行の「入り口(採用)」の見直しに向け、議論が本格化しそうです。

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働き方改革の細則示す 協定様式や手続を公布

働き方改革関連法の施行に向けて、現在は段階的に、関連する施行規則や指針の整備が進められています。9月7日には、改正労基則・安衛則および36協定指針等が公布されました。

時間外規制の強化を含む労基法・安衛法等の改正は、平成31年4月1日施行です(時間外規制の強化については、中小は1年遅れ)。このため、労基則等に関する改正が、先行して公布されたものです。

ポイントは、次のとおりです。

 

【労基則】

・労働条件の明示(労基則5条)
現行では、労働条件通知書は「書面の交付」によるものとされています。改正後は、本人の希望に基づき、ファクシミリや電子メールを用いることも可能となります。

・フレックス制の見直し(12条の3)
フレックス制の清算期間は、最長3カ月に延長されます。ただし、清算期間をーカ月超3カ月以内とするときは、有効期間を定めるとともに、労基署に届出提出が必要で、その様式も明らかにしました。

・36協定の記載事項(16・17条)
時間外・休日(36)協定の記載事項として、法律の本則(労基法36条2項)で列記した事項のほか、以下を定めました。
〕効期間・対象期間の起算日
限度時間を超える場合の理由
その場合の健康・福祉確保措置
い修両豺腓粒篩賃金率
イ修両豺腓亮蠡海
Ψ100時間未満・複数月80時間以内の基準順守
それに合わせて、労基署に提出する36協定届の様式も変更・整備しました。通常の場合と特別条項を付加する場合で別の様式を用いるほか、新商品開発業務従事者や建設・自動車運転者用の様式も別に設けられています。

・年休の時季指定(24条の5〜24条の7)
10日以上の年休が付与される労働者については、5日の年休の取得時季を指定します(自己申請分と計画的付与分は5日から差引き)。この時季指定は基準日から1年以内に実施しますが、年休付与を前倒ししたときは特例ルールを適用します。
なお、時季指定に際しては、本人の意見を聴取・尊重する必要があります(年休管理簿は3年保存)。

 

【安衛則】

・面接指導の要件変更(52条の2)
長時間労働時の面接指導の対象を「月当たりの時間外が80時間(改正前100時間)を超え、疲労の蓄積が認められる者」(本人申出も要件)に変更します。

・新商品開発従事者の面接指導(52条の7の2)
新商品等の研究開発に係る業務は、改正法施行後も時間外の上限規制の適用除外となります。
ただし、この除外対象者については「月当たりの時間外が100時間を超えた」場合、医師による面接指導が義務付けられます(本人の申出は不要)。

・労働時間の把握義務(52条の7の3)
事業者は、面接指導の適正な実施のため、労働時間を「タイムカード、パソコン記録等の客観的な方法その他の適切な方法」により把握する義務を負います。

 

【36協定指針】

従来の「時間外の限度基準」に代え、新たな指針を策定しました。指針では時間外を最小限度にとどめる等の原則を示したうえで、特別条項発動時の健康福祉確保措置の内容(代償休日、相談窓口の設置、勤務間インターバル等)も列挙しています。

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「業種区分」を見直しヘ サービス産業化へ対応

労災保険の「業種区分(事業の種類)」の再編に向けた議論がスタートしました。

 

労災保険料は、「事業の種類」別に定められていて、現在は54の区分が設けられています。厚生労働省は、産業構造の変化等を踏まえ、漸次、区分の見直しを進めてきましたが、今回はサービス業系を中心として新しい区分を設ける方針です。

 

まず、厚生労働省内に「労災保険の業種区分に係る検討会」を設置し、今年度中をめどに見直し案を作成します。新しい業種区分は平成33年度(次の労災保険率の改正予定年)から、適用する予定です。

 

現行の54の業種区分を、内訳別にみていきましょう。最大のグループは製造業で24区分、そのほか建設事業が8区分、鉱業が5区分など、「工業的」な区分が細かく分かれている傾向にあります。

 

サービス系の業種に関しては、「その他の事業」に一括されています(8区分)。

 

この業種区分の編成は、日本の産業構造が製造等の2次産業主体だった時代の名残を残すものといえます。しかし、現在は、サービス経済化の進展により、「その他の事業」に属する企業・労働者が増えています。

 

「その他の事業」の8区分のうち、比率が最も大きいのが「その他の各種事業(業種番号94)」です。「その他の各種事業」には、広告・洗たく・理容・教育、医療など多様な業種(事業の種類の細目)が含まれています。その比率は、事業場構成で33.0%、労働者構成で36.5%に達しています。

 

今回改正では「その他の各種事業」のうち、情報サービス業、教育業、社会福祉または介護事業、幼稚園、保育所、認定こども園の7細目について、独立の業種区分とする案が出されています。

 

現在は一律に1000分3の保険料率が適用されていますが、改正が決まれば、それぞれ個別に保険料率が決定され、保険料が徴収されることになります。

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