労働関係・社会保険関係の法令や人事・労務管理問題に関する
タイムリーな話題を取り上げていきます。
国は外国人受入を積極推進へ 自社の基本スタンス見直しを
 改正入管法が施行され、「特定技能資格」の外国人雇用がスタートしました。
 年月が経ってから振り返ると、「2019年度は、労働政策の大きな転換点だった」と総括されるようになるかもしれません。
 仕組みの受け皿となる改正入管法案自体は、昨年の秋、国会審議ーカ月余という「突貫工事」で成立しました。しかし、その後は、着々と外国人の受入れ環境整備が進められています。
 現在の通常国会には、健保法改正法案が提出されています。主要な内容は「被保険者情報の一元管理」等ですが、「被扶養者要件の見直し」に関する項目も含まれています。今後、外国人の被保険者増が見込まれる中、被扶養者は原則として「日本に住所を有する者に限る」としています。
 労働施策総合推進法(従来の雇用対策法)では、国の重要施策の一つとして外国人の適正雇用を掲ず、それに基づき「外国人雇用管理指針」を策定しています。
 この指針も、今年の4月に抜本改正されました。働き方改革関連法など、最新の法改正情報を盛り込むと同時に、「母国語を使った分かりやすい説明」等の配慮に関する事項を追加しています。
 法整備だけではありません。特定技能資格者のうち、農業・漁業については、派遣形態も可能とされています。既に農業分野に外国人材を派遣する専門会社を設立し、サービス開始を目指している県もあるということです。
 多民族国家の紛争等をみていると、個人的には外国人の多数受入れに危機感を抱く方も少なくないでしょう。しかし、経営者の立場からは、外国人雇用を積極推進する「同業他社との競合」という問題を看過できません。外国人労働力とどう向き合うか、各企業は自社の戦略を長期的観点から練り直す必要があるでしょう。
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一直線に行かない副業の拡大 法整備には十分な時間が必要
 働き方改革の課題の一つとして、「副業・兼業の促進」が挙げられています。会社側にとっても、「副業を通じた創業・新事業の創出や中小企業の人手不足対応」といった効果を期待できます。
 ダブルワークの環境を整えるため、労働・社会保険の整備も課題となっています。厚生労働省では、このほど、雇用保険に関する検討会の報告書を公表しました。
 一つの方向性として、「複数事業所の週所定労働時間が20時間以上になった時点で、本人申出に基づき加入させる」等の案を示し、試行的な制度運用を行うのも有力と提言しました。
 ただし、総論としては「新しい仕組みの対象となるマルチジョブホルダーの数は少数で、事務コスト等も考慮すると、保険給付よりは求職者支援制度や職業訓練で対応するのが適当」という見解を表明しています。
 政府は熱を入れて旗を振りますが、事務方は「雇用保険の制度全体を大きく変えるには、少し時期尚早」と後ろ向きの姿勢をみせている感じです。
 会社組織等でも、トップが懸命に新方針を打ち出すのに対して、従業員が保守的な見解に固執するという図式がしばしば生じます。まさに、「笛吹けど踊らず」です。
 しかし、事務方の厚労省も、現行体制のままで副業・兼業の拡大に対応できない点は痛切に感じているようです。
 たとえば、別の検討会では「副業・兼業の場合の労働時間管理」に関する研究を進めています。労基法第38条では、「複数事業場の労働時間通算」について定めていますが、その解釈に関しては未確定な部分が少なくありません。
 こちらの方面でスッキリした考え方が提示されれば、企業実務の現場でも対応方針を決めやすくなります。次の検討会報告は、労務担当者にとって注目です。
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いよいよパワハラも法制化へ 予防の前提は上司の意識改革
 厚生労働省の労働政策審議会では、パワーラスメント防止対策に関する審議を進めています。
 逆にいうと、今はパワハラが明文の法律で規制されていないということです。しかし、これはペナルティーを受けないという意味ではありません。裁判では、民法の使用者責任や債務不履行責任等の規定により、慰謝料等の支払いが命じられています。
 それでは何をやるかというと、セクハラやマタタラと同様に、指針を定めて、事業主に対してパワハラが発生しないように必要な措置を講じる義務(措置義務)を課そうというのです。
 新たに措置義務を定めるとどうなるかというと、これがまた分かりにくい内容となっています。たとえばセクハラについては均等法11条に規定がありますが、「作為・不作為の請求権や損害賠償請求権を与えるような私法上の効力を持つものではない」(菅野和夫「労働法」)と解説されています。
 しかし、均等法には紛争の解決援助の仕組みが設けられていて、セクハラ関係のトラブルも、都道府県労働局長の助言・指導、調停の対象になります。
 今回、議論されているパワハラ防止対策でも、指針の策定と併せて、調停制度、助言・指導に関する規定も整備するという案が示されています。
 セクハラの場合、会社の上層部がそれを支持するというのは、あり得ません。しかし、成績至上主義の企業風土の中では、パワハラに目をつぶる(容認する)経営者・上司がいないと言い切れるでしょうか。セクハラマタハラが法制化されたのは、ぴったり受け皿になる法律(均等法・育介法)があったからという側面もあります。パワハラをどう法律に組み込むかは今後検討される予定ですが、早めの対策が望まれるところです。
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働き方改革の第一歩が始まる 過重労働防止強化にも留意を

新しい1年を迎えましたが、2019年の課題は何といっても働き方改革関連法への対応です。4月1日から、改正労基法・安衛
法・労働時間等設定改善法が施行されます(時間外上限規制は中小を対象に1年の猶予など、経過措置あり)。

労基法は、時間外上限規制の強化、年休の強制付与、フレックスタイム制の拡大、高度プロフェッショナル制度の創設が柱となります。労基法の陰に隠れがちですが、安衛法の改正も実務的なインパクトは小さくありません。本欄では、安衛法の留意点を再確認します。

 

ポイントをかいつまんで述べれば次の3点です。

^綮嫐明椹愼垣度の再編
∀働時間把握義務の明確化
産業医等の機能強化

 

 

 

^綮嫐明椹愼垣度に関しては、現在(改正前)、時間外が月100
時間を超え、疲労の蓄積が認められる従業員が、自ら申し出た場合に実施義務が発生します。

今回改正では、時間外の基準を「80時間超」に引き下げたうえで、新商品開発業務従事者、高プロ制度の対象者には別の仕組みを新設しました。月100時間を超えれば、申出を介さず、面接指導を実施する必要があります。

面接指導制度再編の前提として、

∀働時間把握義務が安衛法の本則に明記され(66条の8の3)、
管理職等も含め「タイムカード等の客観的な方法」により始・終業時間等を記録し、3年間保存する義務が課されます。

時間外実績を把握した後は、
産業医と連携して過労死等を防止します。事業主は、時間外が80時間を超える労働者の氏名等の情報を産業医に提供すると同時に、労働者にも通知します。労働時間設定改善法で努力義務化された「勤務間インターバル」制度等も整備しつつ、従業員の健
康確保に努めましょう。

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指針廃止で就職戦線に異変? 「日本型採用戦略」の再構築を

経団連が、「採用選考に関する指針」の廃止を表明しました。同指針は、新卒学生の就職活動のスケジュール表を定めるものです。

 

これに対して、内閣官房も「関係省庁連絡会議」を発足させ、対応を検討するとしています。

 

振り返れば、平成25年には選考活動の開始を大学4年生の8月開始とする改正が実施されました(平成27年度から適用)。採用選考活動によって、学生が「本来の学業に専念できない」状況が生じているため、「短期決戦」型のスケジュールに組み替えたのです。

 

しかし、「あまりに日程がタイトだ」という批判の声もあり、平成26年には選考活動の開始を6月に前倒ししました(平成28年度から適用)。

 

今回は、さらに踏み込んで、指針の廃止に至ったわけです。振り子の針は学生生活配慮の方向にいったんは振れたのですが、大きく反対方向に揺れ戻し、振り切れてしまった形です。

 

新卒学生の採用戦線が激化し、「抜け駆け」に走る企業が増えるなか、経団連会長は「ルールがうまく機能していないという反省に基づく決定である」というコメントを公表しています。

 

しかし、現状追認ではなく、今後は「新卒一括採用と、募集基準を明確化した通年採用の併用が大事」と述べました。

 

いわゆる就職協定は、名前や性格を変えつつ、昭和28年(27年と記述するものもあります)から存続してきました。資本・商品市場と異なり、「労働力市場」はグローバル化の影響を受けにくい傾向があります。しかし、さすがに抜本的変革が必要な時期に来ているという指摘には一理あります。

 

政府の側も、通年採用の広がりを推進する方針を示しています。これからは、日本型労働慣行の「入り口(採用)」の見直しに向け、議論が本格化しそうです。

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